今回は冷却水系のトラブルについて書いてみたいと思います。
先月から問題になっている軽石が船外機に及ぼす影響についても書いています。同じ船外機を使っているボートオーナーの参考になれば嬉しいです。
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海水を利用
漁船(ディーゼル)や船外機など船舶のエンジンは車とは違い、海水をくみ上げてエンジン周囲を循環させて冷却しています。(水冷式)
その為、インペラと呼ばれる部品がシャフトに付いており稼働時には常にインペラ(黄色〇)が回っています。
船外機の場合はペラの少し上に吸い込み口(赤〇)があります。
細かい網目状のカバーが付いているのでゴミ等は入らないようになっていますが、1㎜以下の物は入り込んでしまいます。
ケースを外すと中はこのようになっています。シャフトに付いているインペラ(黒色)が回転し海水を押し出しています。矢印の穴が海水が通る部分です。
インペラはゴム製なので定期的に交換が必要です。*メーカー推奨は1年交換
左側が新品のインペラです。劣化するとゴムが硬化して先端が破損したり、色々とトラブルを起こします。冷却水が回らないとオーバーヒートを起こすので船舶では重大な事故に繋がります。
軽石の影響
今回問題になっている軽石ですが、海面にプカプカ浮いているように見えますが実は細かい軽石は海中を漂っています。*細かくなると浮力が失われる為
船外機に影響が出るのは海中を漂っている細かい軽石です。*漁船は大きい物も吸い込む可能性あり。
船外機には冷却水用のフィルターがありません。漁船にはフィルターがあるので目視で確認して取り除く対処ができますが、船外機が詰まった場合は分解修理になる可能性があります。前例がないのであくまでも想像ですが吸い込み口が詰まるか、エンジン内部が詰まる可能性大です。運良く詰まらなくてもインペラへのダメージは大きいと思います。
実際には浅瀬の砂地なども航行するので普段から小さな砂は循環していると思いますが、今回のような大量の軽石の中を航行するのはかなり危険だと思います。
冷却水が循環しない原因
船外機にはパイロットウォーターと呼ばれる冷却水の一部が目視で確認できる排水があります。
写真は少し排出量が弱いですが、新しい船外機は勢いよく排出されます。
エンジン始動時には必ずパイロットウォーターの排出を確認します。
もし全くパイロットウォーターが出ていない場合には何かしらのトラブルが起きている可能性があります。
原因として
- インペラの破損
- 吸水口の詰まり
- パイロットウォーター排出口の詰まり
- エンジン内部の冷却水路の詰まり(潮の蓄積)
等が考えられます。
サーモスタットの固着も影響を与える可能性があるので、ついでに点検する事をおすすめします。
*パイロットウォーターはあくまでも確認用の排水です。出ていなくても内部では循環している場合も有り。また、その逆で出ていてもオーバーヒートしたケースもあるようです。
対処法は
まずは原因を特定していきます。一番簡単なのは吸水口の確認です。船外機をチルトアップしてビニールなどの異物がないか確認します。異常がなければ他の原因を探ります。
意外とパイロットウォーター排出口の詰まりが起こるので、細い針金などを突っ込んで異物がないか確認してみて下さい。
冷却水が僅かでも出ている時には指で排出口を塞いで水圧を何回かかけると改善する事もあります。
*水道があれば排出口から水を逆流させるか、高圧エアーを送るのも効果的です。(エンジン停止時)
実際の使用例(コンプレッサー)
一番直近の様子を載せてみたいと思います。(令和4年4月11日)
バッテリーに繋いで使える小型コンプレッサー!
エアーツールを揃えればトレーラーや車・自転車・浮き輪などの空気入れが行えます!しかもバッテリーに繋げばどこでも使えるのでかなり便利です!
エンジン停止の状態でパイロットウォーター出口にガンを差し込みます。
*事前に改良してホースを外に出しています。そのままの状態であればトップカウルを外して差し込む事もできます。
矢印(赤)のホースを外して差し込んで下さい。
通常のエアーガンのノズルはホースに入らないので細いタイプがおすすめです!
しっかりコンプレッサーのエアーが溜まった状態で吹き付けます。
*高圧エアーなので各ホースの接続部などが外れる恐れがあります。自己責任で行って下さい。
これが実施前の排出量です(笑)ほぼ出ていません、、、。
実施後の排出量(笑)
写真だと嘘っぽいですが、、、。自分の船外機の場合はこれぐらいの効果が出ます!
普段あまり排出されていないので逆に出過ぎて心配になります(笑)
実施後、4,5回の釣行で実施前の排出量(ほぼ出てない状態)になっていましたが、現在は排出量が変わらず常に全開で出ています!(令和4年6月時点)
全ての船外機に効果が出るわけではありませんが、排出量が気になる船外機のオーナーさんがいたら試してみる価値はあると思います。
ワンポイントアドバイス!
これまで何回かコンプレッサーを吹き付けて気付いた事があります!
それは陸上よりも係留状態の方が効果が出る事です!
【ストローをイメージしてみて下さい!】
①何もない状態でストローに息を吹きかけると何の抵抗もなく息が吹き抜けていくと思います。
②次はコップに水が入った状態の中にストローを入れて吹きかけるとどうですか?
何もない状態よりも少し抵抗を感じながら、強く吹かないとプクプク空気を出すことができないと思います!
これを船外機に置き換えて考えてみると、、、
陸上だと吸水口に水がないので高圧エアーは何の抵抗もなく吹き抜けていきます。係留状態だと吸水口に海水があるので高圧エアーの出口が塞がれて、冷却水路に多少の抵抗を与えながら高圧エアーが各部分を吹き抜けていくと思います。多分、これが効果の原因だと勝手に思っています(笑)
*個人の勝手な考察です。他の原因も色々考察してみて下さい(笑)
それでも改善しない場合にはインペラを疑います。長期間インペラ交換していない場合にはチェックを兼ねてインペラ交換して下さい。
実際には
冷却水が完全に詰まった状態で稼働した場合にはオーバーヒートを起こしエンジンに大きなダメージを与えます。
実際にはセンサーが働き、警告音やエンジンストップなど抑制がかかります。またエンジン本体が過剰に熱くなり(トップカウルからも触れない程度)、焦げたような臭いや蒸気が出たり明らかな症状が出ます。
異変を感じた場合は無理に出航せず、原因をしっかり特定して対処して下さい。機械に詳しくない方は直ぐに業者に点検・修理依頼する事をおすすめします。
余談①
ここで少しだけ自分の船外機について書いてみます。
現在使用している船外機は 『06年製造 YAMAHA F90BET』ですが、 パイロットウォーターの排出量がとても弱いです。
係留時は定期的にエンジンを掛けるので水洗いはしていませんが、陸揚げ時は毎回水洗いしています。
中古なので新品の時の排出量はわかりませんが、購入時から排出量が弱く気になっていました。
ある時、別の修理があったのでパイロットウォーターの事を業者に聞いてみると「この船外機はよくある」との事。詳しく話を聞くと、全く同じ船外機を分解洗浄しても排出量が変わらなかった事を教えてくれました。
船外機の型式によってパイロットウォーターの排出量に違いがあるようです。
*自分の船外機はパソコン診断でこれまで異常数値はなし。
あくまでも『余談』なので絶対に参考にしないで下さい!!
余談②
これは知り合いの船外機で起きた実際の事例です。
船外機を使用後は2つの水洗い方法がありますが、最近の船外機はほとんどエンジン停止状態で水洗い装置に水道を繋いで流していると思います。
あと1つの方法は吸水口にモーターフラッシャーを付けてエンジンを掛けて水洗いする方法です。
知り合いは普段からモーターフラッシャーを使用しているので、その日もいつものようにホースを繋いで10分程水洗いしていましたが、突然エンストしたとの事。その後は全くエンジンが掛からず業者に点検依頼するとまさかのオーバーヒート、、、。
原因は、、、
錆びて挟む力が弱くなって水圧がかかっていなかった事が原因でした。要は冷却水なしでエンジンを掛けた状態です、、、。
同じようにモーターフラッシャーで水洗いをしている人は注意して下さい!!
装着後も外れる可能性があるのでモーターフラッシャーから目を離すのは厳禁です!!
特に古いモーターフラッシャーを使っている人は出来るだけ早く新品に買い替えて下さい。ゴムも劣化して密着性も低下します。点検・修理代を考えると安い買い物です!
日頃のメンテナンス
船外機の冷却水系統はとても重要な機能で異常があると大きなトラブルになります。しかし、日頃のメンテナンスで十分に予防する事ができます。一番効果的なのは使用後の水洗いです。係留保管の場合にも出来るだけ水洗いをしてエンジン内に潮を残さないようにしましょう!
このブログが少しでも役立てば嬉しいです。
係留時も使える水洗いキット!
その他のトラブルについても載せています。船外機を使用している方は覗いてみて下さい。
船外機のトラブル(チルトモーター)→https://bruna2.com/tilt-motor/
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